2026年5月、第54回朔太郎忌の委嘱書き下ろし作品として初演された『早く家に帰りたい。/柵の向こうの朔太郎』を、作者・加藤真史自身の演出により上演します。
チケット発売:8月9日(日)
https://engekibinetsu.peatix.com/本作は、萩原朔太郎を郷土の偉人や文学史上の記念碑として扱うのではなく、その言葉、孤独、散歩、都市感覚、詩的想像力を手がかりに、現代に生きる私たちが朔太郎と出会い直すための演劇として構想された作品です。
舞台には、萩原朔太郎のほか、種田山頭火、朔太郎の曾孫にあたる現代の人物、そして語り手が登場します。帰ること、歩くこと、記憶すること、場所に残された時間をめぐり、それぞれの言葉と声が重なり、すれ違い、響き合います。
ただし、これは台本を手にした俳優が言葉を聞かせることを中心とする、通常の朗読劇ではありません。俳優の声だけでなく、身体の存在、互いの距離、沈黙、複数の声の重なり、音楽、音響、映像、写真、光、そして会場そのものが、等価な表現として舞台を構成します。
かといって、大がかりな舞台装置を建て、登場人物の生活や物語を写実的に再現する、いわゆる普通の演劇でもありません。読むことと演じること、文学と身体、記憶と現在、写真と舞台のあいだに生じる揺らぎそのものを、上演として立ち上げます。
演劇/微熱少年はこれまで、劇場だけでなく、美術館、文学館、学校、公共施設などへ創作の場を広げ、文学、美術、音楽、映像、教育、アーカイブと演劇を接続してきました。それは、異なるジャンルを単に組み合わせることではありません。それぞれの表現が置かれる場所や関係を変えることで、演劇とは何か、文学を上演するとはどういうことか、芸術が社会の中でどのように存在できるのかを問い直す、アートの越境と再定義の実践です。
前橋文学館で生まれた本作とともに、演劇/微熱少年が5年ぶりに原点の地ともいえる太田へ戻ります。会場は、美術館と図書館が一体となった太田市美術館・図書館の視聴覚ホール。文学を読む場所、作品を展示する場所、人が集い学ぶ場所に、演劇の時間を持ち込みます。
出演は、村山朋果、田村菜穂、大竹直(青年団)、酒巻誉洋。群馬県にゆかりを持ち、映像と舞台の両分野で活動する俳優4名が、それぞれの身体と言葉によって作品を立ち上げます。
また、本公演では、萩原朔美による写真作品『100年の定点観測』(世田谷美術館蔵)を使用します。舞台上の言葉、俳優の身体、写真に刻まれた時間が交差し、朔太郎の時代と現在、前橋という場所と太田という場所を結びます。
すべての入場者に、文庫版上演台本を進呈します。
舞台の一冊を、ポケットに入れて持ち帰る。
一度きりの上演で消えていくはずの言葉を、一冊の本として観客の手元に残すこともまた、演劇と文学、上演と記録の関係を問い直す、本公演の重要な試みです。